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2021年3月23日 開催レポート 第12回お能への誘いの会 「三井寺」

「三井寺」をテーマに開催した武相荘の能楽講座のレポートをお届けいたします。

2021年3月13日(土)開催
講師 能楽師 シテ方喜多流 友枝雄人氏
講師 能楽師 小鼓方幸流 成田達志氏
解説・司会 青柳恵介氏(古美術評論家、五蘊会会長、觀ノ会発起人)

舞台となる三井寺(みいでら)について、青柳恵介氏による解説

  • 三井寺は琵琶湖に程近い滋賀県の大津にある。
  • 三井寺の鐘は三井晩鐘(みいのばんしょう)といって近江八景の一つに数えられているが、それはこのお能ができた時代より後のこと。
  • 三井寺というのは通称で正式には園城寺(おんじょうじ)という。園城寺は長等山という山の麓にある。お寺というのは山とセットになっている。この長等山は桜の名所でもある。
  • 園城寺は、円珍というお坊さんが再興して大きくなったお寺。若くして優秀な人で比叡山で修行をしたあと遣唐使として唐に派遣され修行した。帰国してから園城寺に入り、このお寺を大きく発展させた。
  • 比叡山延暦寺にはもう一人、円珍と同じように遣唐使として唐に渡り帰国した、円仁という優秀なお坊さんがいて、この人も様々な活躍をした。二人の仲は悪くなかったが、その後、弟子たちの時代になって仲違いをするようになり比叡山延暦寺を分断する原因になっていく。寺門派と山門派というふうに分かれて熾烈な争いをするようになっていった。
  • 能「三井寺」にワキとして登場する住僧は、ものがたりの途中、「三位殿」と呼ばれているシーンがあるが、天皇から与えられる位でかなり高い身分。

ものがたりを追いながら、ポイント解説

  • 主人公が子供を失って訪ね歩く能は、隅田川、桜川など他にもいくつか存在する。
  • シテは「千満の母」、我が子を人買いに拐われた母親。
    この人は、清水寺では観音様が夢でお告げをしてくれる、というのを知って、駿河国(するがのくに)清見ヶ関から遠路はるばる京都に上り、清水寺を訪れている。そして、夢を授かるために清水寺にお籠りをしていると、「三井寺へ参れ」という霊夢を授かる。
  • 清水寺の門前には夢合わせ(占い)をしてくれる人がいて、その夢の意味を教えてくれる。
    尋ねる人に近江{逢う}、思う子を三井寺{見いでる}という意味だから、早速三井寺へ行きなさい。と教えてくれる。母親は喜んで、三井寺へ向かってたつ。
  • 舞台は変わって、秋も半ばの三井寺。
    住僧と幼い弟子が登場する。
    他のお坊さんたちも一緒に、中秋の名月、十五夜の月見をしようと講堂の広い庭に出てきているところ。
  • 能力(のうりき)と住僧とのやりとり(狂言で語られる部分)—— 能力というのはお寺の雑用をする人。
    寺の近くに女物狂が来たというので、能力はそれを見たいと思う。しかしお寺はそもそも女人禁制なので、能力は住僧へ取り入って、なんとか狂女を通そうとするが、住僧には「そのようなものは無用」と重ねて断られる。しかし結局なんのかにの言いながら、狂女を庭へ通し入れてしまう。
  • 後ジテの登場
    狂女は、子供を失って錯乱してしまっている千満の母。印象的な橋掛かりのシーンとなる。

さまざまな言葉

  • 滋賀の山越え —— 花の吹雪という言葉のとおり、桜の名所。
  • (にお)の海 —— 鳰というのは琵琶湖に生息する水鳥、カイツブリのこと。現在でも沢山いる。
  • ささ波や志賀辛崎の一つ松 ——「ささ波」は琵琶湖のまくら詞。
  • 桂はみのる三五の暮 ­——十五夜のこと3×5=15
  • 詩狂 —— 辞書には無い言葉、良い言葉ですね。「狂」というのはある境地に至った状態をあらわしている。

鐘について

  • 銘東大寺。(なり)平等院。(おと)園城寺と申して。天下に三つの鐘にて候。とある。
  • この鐘は秀郷とやらんの龍宮より。取り帰りし鐘なれば。
    —— 藤原秀郷は平将門の乱を鎮めた人、西行の先祖でもある。三井寺の鐘には、秀郷がムカデ退治を成し遂げた際に龍宮からお礼として贈られた鐘だという伝説がある。
  • 龍女が成佛
    —— 当時、仏教の教えでは女性は成仏できなかったが、唯一、法華経には八才の龍女が成佛したという話があり、この鐘も龍宮から贈られた鐘なので、女性の成仏に通じる。
  • 初夜(しょや)の鐘、後夜(ごや)の鐘、晨朝(じんじょう)(の鐘)、入相(いりあい)(の鐘)
    —— 一日の決まった時に鳴る鐘の、それぞれ時刻を表す。
    初夜は20時、後夜は早朝4時、晨朝は朝8時、入相は夕暮れの日の入り
  • 鐘の段
    —— 鐘を前にしての三井寺のクライマックスの部分を鐘の段という。

狂女の言葉に、頻繁にとりこまれた漢詩や古典

  • 身分や知性を映している。
  • 〈友枝〉能に出てくる狂女は、相手に対して引き下がらず、最後には必ず言い勝つ。
  • 言い合っているうちに(狂女が)こんなことまで言うのかという驚きが生まれる。

鼎談より

友枝雄人氏(1)

  • 能の中でも、狂女物というのは、演じるのが難しい。
  • 三井寺のシテは「千満の母」とされているが、それ以外の本人に関する情報が無い。シテ方としては、ひたすら謡い込む中で存在を見つけていかなければならない。
  • 狂女物には、悲しい気持ち—— 静 と、狂っている—— 動 があるが、この能はより静か。
    静けさ透明感が全体を貫いていて、興奮というのはもちろんあるんだけれども、表現としては満月の下の静けさの中での静かな興奮。
  • ストーリーは子供との再会だが、テーマは透明感のある近江の風景を、謡いとお囃子で作り上げていくところにあると思う。

成田達志氏

  • 囃子方にとっては、一言で言えば最高の曲です。
  • 静かである。ということも言える。どういうことかというと、たとえば能がはじまるところはシテが中央に立って謡うところから始まる。そういう能は他には無い。
    囃子方は謡いが始まってから、その謡をあしらっていく。
    気を使うのは「静けさ」を大切にすること。
  • 後半の場面に入るところ、子方と僧が出てくるところ、ここはそれまでと違い大勢の僧侶と子供がざぁーっと出てくる。この場面には、子供を連れ去られている母親の悲しさは無い。この切り替えは難しいところ。
  • お寺へ向かって後シテ(狂女)が出てくるシーンでは「一声」というものがある。
    この表現は、その後に続くシテ方の謡いを誘う、重要な部分。
  • その後の橋掛かり、狂女が山を越えてくるシーンの演奏はこんな風になります。
                                       〜〜〜実演〜〜〜
    この楽譜は他のお能にもある。全く同じ楽譜なんですが、
    これが義経、屋島だとこんな風になる。
                                       〜〜〜実演〜〜〜
    お婆さん、小野小町だとこんな風になる。
                                       〜〜〜実演〜〜〜
    ※楽譜が同じとは思えない! 表現の豊かさに、みなさん聞き入っておられました。
  • この能の中で華やかなのは1箇所だけ。全体通して静けさが大切にされた曲です。一番盛り上げるクセの部分でさえ……普通は、だんだん盛り上げていってクライマックスなんですが、三井寺は、だんだん、静かになっていく。
  • 見るところ、聞くところのいっぱいある曲です。

友枝雄人氏(2)

  • 最後の最後、シテが舞台から袖に去っていくところで、そっと、鐘に目をやるシーンがあるんです。
    そこまでのシーンで「鐘」ってものはどういうものかってのを、えんえん述べている。
    しかし、自分がその鐘を撞いたことで、子供と出会えた。
    最後の最後にその鐘に目をやるシーン、ここも見所の一つかなと思います。

鐘の段の実演と、小鼓演奏の体験

最後の30分は、お二人による「鐘の段」の実演をじっくり鑑賞させていただいた後、
成田達志さんによる、小鼓演奏の体験が行われました。
初めて目にする方も多い縦書きの楽譜をみながら能のリズムを楽しみました。

以上、武相荘お能への誘いの会12回のレポートとなります。

「三井寺」の美しさが想像される、感性を刺激される会ではなかったでしょうか。
ご参加の皆さま誠に有り難うございました。

友枝雄人さん、成田達志さん、両氏ご出演の舞台本番となる、觀ノ会第四回公演「三井寺~鳰の湖、照らす心~」は4月24日に東京・渋谷のセルリアンタワー能楽堂で開催されます。講演情報はこちらよりご覧ください。

2021年3月18日 花の庭

三月は、一年を通して武相荘に一番花の多い季節かもしれません。

駐車場側の入り口から、竹林を抜ける遊歩道には様々な椿が。

今満開の聚楽(じゅらく)。たっぷりとした大輪に貫禄があります。

石垣を登る小径には、ちらしたように黄色い花が。日向水木の木です。
(※階段は畑の奥にあり、お通りいただくことは出来ません。遊歩道からお楽しみください)

下側は井戸水が流れ込んでおり湿地を形成しています。すっかり若草に覆われました。
奥に見える黄色の花は連翹(れんぎょう)です。

白洲次郎が中学生の時に乗っていた最初の車、PEIGE(同型車の展示)

レストラン前の地表を覆っている深緑の草に花が咲きました。ヒメツルニチニチソウです。

いつも季節の花々でお出迎えをしている、レストラン入口の灯明台、
変わった椿が生けてありました。

瓦門の脇にある真紅の大輪は、熊谷という椿。
右下の花はおしべが他と違います。灯明台に生けてあったのはこの花です。

例年は足早に去っていくような春が、今年は少しゆっくり停まっているような気がします。

茅葺のミュージアムでは春展を開催中です。
もともと人が密集するような場所ではありませんが、快適にお楽しみいただけるよう、ひきつづき消毒や室内の換気等、感染対策を十分に備えてお待ちしております。

2021年2月18日 武相荘は椿と梅の見頃です

春を呼ぶように、花々が一斉に開花しています。

椿・有楽(太郎冠者)

竹と競うように大きく枝を張った高木の椿は、有楽。
駐車場側の入口から、竹林を抜ける遊歩道沿いにあります。

椿・有楽(太郎冠者)

竹林のトンネルを抜けると、お能の橋掛かりのようなウッドデッキが続きます。
このウッドデッキ沿いにも、数寄屋や聚楽、他何種類かの椿があります。

武相荘・白梅・能ヶ谷ラウンジ

突き当たり建物前の、可愛らしい木
遠目には雪のような白い花は、白梅です。
ぽつぽつ咲き始めています。

武相荘・白梅
白洲次郎・PAIGE

階段を登って、次郎のガレージ。

武相荘・瓦門

門からはみ出して見えるのは紅梅です。

武相荘・紅梅

満開。今年も見事です。
これから花が散ってくると石畳のまわりが花吹雪で紅に染まります。

上にばかり目が行きますが、地表には立派に福寿草が咲いていました。

武相荘・茅葺のミュージアム

午前中—柔らかな光が茅葺の大きなガラス戸を照らしています。

武相荘・竹林

窓の正面にはさきほどの竹林が見えます。

武相荘・石塔

2月17日は白洲次郎の誕生日でした。
竹林の中央にある石塔に、スタッフが椿を飾っていました。

武相荘ミュージアム・冬展

茅葺のミュージアムでは「武相荘—冬展」を開催中、今月25日まで。
庭のお花とともに、ぜひお楽しみください。

2021年2月3日 3月13日(土)開催〈第12回〉お能への誘いの会 「三井寺」

このイベントは終了いたしました。ご来場の皆様まことに有難うございました。今後のイベント予定は当ウェブサイトのほか、InstagramFacebook でもお届けしています。

お能を知りたい、体験したい、という方に絶対おすすめの武相荘の能楽講座。
今回は狂女物の傑作といわれる「三井寺」がテーマです。

クリックして大きな画像を開く(PDF/488KB)

人買いに幼子を拐われた母親が、我が子の行方を尋ねて京へ上っていました。清水寺に籠り観世音に願をかけていると、夢の中で「我が子に逢いたいと思うならば、三井寺へ参りなさい」というお告げを授かります。母親は、観世音さまが我が子にお合わせくださるのかもしれないと、お告げのままに近江の三井寺へと急ぎます。
場面は変わって秋半ばの八月十五夜(※旧暦)。三井寺では、この日ばかりの名月をお月見しようと、住僧たちが皆続々と庭に出て来ていました。やがて月が中天にかかる頃、境内へ笹を手にした狂女がさまよい現れます。——三井寺 前半のあらすじ

今回のテーマ曲は「三井寺」。秋の夜の満月の下、しかも舞台は湖西、琵琶湖のほとりの山寺です。本曲が名曲と言われる所以は、謡の言葉の表すその景色、透明感です。この度はその風情を深める三井寺の鐘の音に焦点を当てます。古くより三井寺の晩鐘としてその音は有名ですが、その鐘の音を舞台上でどのように聴かせるのでしょうか。謡の力による景色の広がりを視覚、聴覚、また秋の夜の風情の肌感覚を踏まえてお楽しみ頂きたいと思っております。

友枝雄人

講師は、シテ方喜多流 友枝雄人さんと小鼓方幸流 成田達志さん。お二人は以前より数々の大作を共にされている間柄です。ナビゲーターは青柳恵介さん。今回もお能の成り立ちやそのバックボーンとなる時代のことをリアルにお聞かせくださいます。

お能の世界に触れ体感していく楽しい会です。初めての方もぜひ奮ってご参加ください。
お申し込みは下記より。

過去開催のレポートもご覧頂けます。
前回「田村と白田村」「お囃子の魅力」「実盛」の会「山姥」の回「井筒」の回


会場にはウイルス対策を充分に施して開催致します。皆様におかれましても体調管理とマスクの着用をよろしくお願い致します。

開催概要

  • 【講師】シテ方喜多流 友枝雄人氏、小鼓方幸流 成田達志氏、五蘊会会長 青柳恵介氏
  • 【日程】2021年3月13日(土) 15:30—17:00
    15:00受付開始(会場入口にて)、開始15分前までに受付をお済ませください。
  • 【会場】旧白洲邸 武相荘 能ヶ谷ラウンジ
  • 【定員】30名
    次の場合、本会はキャンセルとなります。その場合にはご連絡の上払戻しを行います。
    (1)新型コロナへのさらなる緊急対応が必要とされた場合。

参加料

〈特典1〉本会と同時申込みで、4月24日開催の能舞台「觀ノ会」の観劇券を1割引でお求めいただけます。觀ノ会の詳細はは下記リンク先をご確認ください(座席表あり)。
觀ノ会第四回公演「三井寺~鳰の湖、照らす心~」

  • A. 講座参加のみ 3,300円
  • B1. 講座 + 觀ノ会[SS席]チケット 14,100円
  • B2. 講座 + 觀ノ会[S席]チケット 12,300円
  • B3. 講座 + 觀ノ会[A席]チケット 10,500円
  • B4. 講座 + 觀ノ会[B席]チケット 8,700円
  • B5. 講座 + 觀ノ会[C席]チケット 6,900円

〈特典2〉茅葺の武相荘ミュージアムを2割引にてご観覧いただけます。
ミュージアムにて入場チケットをお求めの際、当イベントの参加者であることをお伝えください。
※ミュージアムは17時閉館ですので、必ずイベント開始よりお早い時間にご観覧ください。

お申し込み

  • 定員に達したため、お申し込みは締め切りとなりました(2月19日)。ご参加の皆さまどうぞお楽しみに。
  • 会場内ではマスクの着用にご協力お願いいたします。
  • 購入にはクレジットカード決済がご利用いただけます。銀行振込がよろしい方は武相荘 (info@buaiso.com) までメールでお問い合わせください。
  • 2021年3月8日(月)締め切り

講座後に武相荘レストランでディナーはいかがですか?

  • 「お能の会 特別コース」 ¥3,800(ドリンク代別/税別)
    イベント終了後 17:30〜。武相荘での一日を心ゆくまでお楽しみください。
  • ※直接レストランへのお申し込みが必要です。お支払いは当日となります。
    レストラン直通TEL.042-708-8633

お申し込み後のキャンセルにつきまして
お席の準備がございますので開催1週間前までに必ずご連絡お願い致します。


2021年1月29日 武相荘の講座 青柳恵介さんお話会 白洲正子 日本の名宝100〜その1〜 聖林寺の十一面観音

このイベントは終了いたしました。ご来場の皆様まことに有難うございました。今後のイベント予定は当ウェブサイトのほか、InstagramFacebook でもお届けしています。

古美術や能楽などを通して感じられる、日本に生まれた美。
白洲正子とは、その美の本質を追いかける同士として意気投合し、長きにわたり非常に近しい関係にあった青柳恵介氏による、新しいお話会シリーズが始まります。

青柳恵介さんお話会 聖林寺の十一面観音

「白洲正子 日本の名宝100」と題した本会では、正子が生前その足と目で確かめて行った宝物を毎回一つずつ取り上げて、青柳先生がお話を聞かせてくださいます。

さて記念すべき名宝〜その1〜に選ばれたのは「聖林寺の十一面観音」です。

「十一面観音巡礼」という本を著し、日本中の十一面観音に関心をよせていた正子が「天平時代の仏像の中では一番好き」と言っていた観音様には、どんな秘密やエピソードがあるのでしょうか?!

ご自身も日本国中を旅されている青柳先生、お話は各地の様子がありありと目に浮かぶようで、旅行気分で楽しんでいただけたらと思います。

春の武相荘での開催です、初めての方もどうぞお気軽にご参加ください。
お申し込みは下記リンク先よりお願いいたします。


青柳恵介氏プロフィール

古美術評論家。五蘊会会長。觀ノ会発起人。
1950年生まれ。東京都出身。
成城大学大学院博士課程修了。専門は国文学。古美術評論家。成城学園教育研究所、成城大学、東京海洋大学の講師を務めた。
著書に「風の男 白洲次郎」(新潮社 1997)、「骨董屋という仕事」(平凡社 2007)、「白洲次郎と白洲正子―乱世に生きた二人―」(新潮社 2008)などがある。

青柳恵介氏
新潮社刊「古伊万里 磁器のパラダイス」より

会場にはウイルス対策を充分に施して開催致します。皆様におかれましても体調管理とマスクの着用をよろしくお願い致します。

開催概要

白洲正子 日本の名宝100 〜その1〜「聖林寺の十一面観音」

  • 【講師】青柳恵介氏
  • 【日程】2021年4月17日(土) 15:30—17:00
    15:00受付開始(会場入口にて)、開始15分前までに受付をお済ませください。
  • 【会場】旧白洲邸 武相荘 能ヶ谷ラウンジ
  • 【定員】30名
    次の場合、本会はキャンセルとなります。その場合にはご連絡の上払戻しを行います。
    (1)参加応募が15名に満たない場合。

    →ご応募が15名を超えましたので開催予定となりました!
    (2)新型コロナへのさらなる緊急対応が必要とされた場合。

参加料

  • 3,300円(税込)

〈参加特典〉茅葺の武相荘ミュージアムを2割引にてご観覧いただけます。
ミュージアムにて入場チケットをお求めの際、当イベントの参加者であることをお伝えください。
※ミュージアムは17時閉館ですので、必ずイベント開始よりお早い時間にご観覧ください。

お申し込み

  • 定員に達したため、お申し込みは締め切りとなりました(3月8日)。ご参加の皆さまどうぞお楽しみに
  • 会場内ではマスクの着用にご協力お願いいたします。
  • 購入にはクレジットカード決済がご利用いただけます。銀行振込がよろしい方は武相荘 (info@buaiso.com) までメールでお問い合わせください。
  • 2021年4月12日(月)締め切り

講座後に武相荘レストランでディナーはいかがですか?

  • ディナーをご希望の方は、レストランへ直接ご予約ください。
    レストランご案内ページ
    イベント終了後 17:30〜。武相荘での一日を心ゆくまでお楽しみください。
  • ※事前のお申し込みが必要です。お支払いは当日となります。
    レストラン直通TEL.042-708-8633

お申し込み後のキャンセルにつきまして
お席の準備がございますので開催1週間前までに必ずご連絡お願い致します。

2021年1月20日 紅梅が咲き始めました

今朝は冷え込みました。メダカのすみかの大鉢にも氷が張っています。

お日様のありがたみを感じます。
オープンカフェの囲炉裏では炭を炊いています。

お庭の真ん中にある紅梅。今年は少し早めに花が開き始めました。

満開は2月初旬ごろでしょうか、この木全体が濃い桃色に染まるのです。

遊歩道の下側斜面に咲いているのは蝋梅
こちらはもう終わりかけでした。

椿「大唐子」
瓦門をくぐって左手、レストランの向かい側に咲いています。

木漏れ日ならぬ竹漏れ日が綺麗です。
奥の裏山へ足を伸ばしてみましょう。

足下を見ると、散った紅葉の葉がたくさん。

枝にもまだたくさん残っています。

道祖神のような石塔

石段途中に、熊本の大名加藤清正が戦の時、旗を立てた石が置かれています。
正子が実家の薩摩の樺山資紀伯爵家から移設したものです。(写真右下)

コツコツコツコツ、音がする方を見上げるとキツツキが!
木の節を一生懸命叩いていましたが、いったい何をしているのでしょうか。
(※アオゲラという種類だそうです)

すれ違ったお客様はわずかでしたが、マスク越しに
皆さんほっとされて表情も緩んでいるように思いました。
次郎と正子が大切にした、往時のままの自然に囲まれた空間です。
どうぞ遊びにいらしてくださいね。

2020年12月16日 開催レポート 第11回お能への誘いの会 「能の演出効果 ——田村と白田村」

今回は能「田村」と、田村に特別な演出を加えた「白田村」を題材に、能における演出効果について、お話と実演を通して学びました。開催レポートをお届けいたします。

左から、青柳恵介氏、友枝雄人氏、成田達志氏

2020年12月5日(土)開催 第11回 武相荘お能への誘いの会「能の演出効果 ——田村と白田村」
能楽師 シテ方喜多流 友枝雄人氏
能楽師 小鼓方幸流 成田達志氏
解説・司会 青柳恵介氏(古美術評論家、五蘊会会長、觀ノ会発起人)

能「田村」青柳先生による物語の解説

  • 田村とは坂上田村麻呂のこと、蝦夷征伐をした将軍。
  • 能「田村」は、今昔物語と、清水寺縁起という書物を典拠に作られている。
  • 物語のはじまりは、桜の季節の清水寺に、ワキである旅の僧が到着するところから。
  • 「この寺の地主の櫻に若(し)くはなし」――地主(じしゅ)というのは普通名詞で、本来はどこでも土地の鎮守の神様のことをそのように言うが、ことに桜の美しい地主権現といえば清水寺を指す。この地主権現、このお能の一つのテーマと思われる。繰り返し出てくる。
  • 僧が寺で出会う童子=花守=花守というのは桜の木をお守りしている童子。
  • 三十三という数字も出てくるが、観音信仰に通じている。
  • 非常に眺めのいい清水寺の境内。僧が「又見え渡りたるは皆名所にてぞ候らん御教え申し候べし」ここから見える名所をお教えください。というと、童子はお教えしましょうと言って、見える名所を次々に教えていく。演者も舞台をはしから見渡していって、舞台を中心にぐわ~っと、風景が見えてくるような描写になっている。お能のこういう見せ方を『名所教え』という。
  • 前半のクライマックス
    僧と童子が一緒に詩を口ずさむ
    『春宵一刻(しゅんしょういっこく)。値千金(あたいせんきん)。花に清香(はなにせいきょう)。月に陰(つきにかげ)』
    これは実にうまい引用。また、同じ刻を共有しているのが中年の僧と美しい童子であるというのが面白い。本番でシテの友枝さんが童子になりきって舞っているところにぜひみなさん注目してください。
  • この後、童子が唐突に歌を詠んでいる。
    『ただ頼め。標茅(しめぢ)が原のさしも草」
    これまでの文脈につながらない。この歌は「袋草子」という歌書や新古今和歌集に取り上げられた歌で、意味は、女の人が恋がうまくいかなくて死んじゃおうかしら、というのに、神様が、待て待て待てまずは私を頼りにしなさい、助けてあげますから。と言った歌。直前からの文脈はつながらないんだけれど、この部分が一種の色香をそえているような気がする。これは、地主権現の言葉なのである。
  • 童子は田村堂の中へ消えていく。ここで前半の終わり。
    田村堂というのは今も清水寺の中にある。坂上田村麻呂の彫刻が収められているお堂。
  • 〜前半と後半の間のアイ狂言〜
    清水寺の門前に住むというものが清水寺の縁起や坂上田村麻呂について語る。その中で当時、勢州(伊勢を中心とした今の三重県)の鈴鹿山に鬼神が出て民を悩ましていて。田村丸(田村麻呂)は天皇から鬼神征伐の命を受けて、それを成し遂げて、その後この清水寺が建立されたと話している。当時の鈴鹿山というところは関(せき)となっていて、険しい山の中で、山賊がいつも出ていた。さらに鬼神も出る。今昔物語には無いが、当時の複数の文献にそういう記述があり、それを能の作者は物語の中へ拾い上げた。
  • 後半は鬼神を退治するところ
  • (清水寺建立のきっかけとなる)この観音様に祈念し加護を得て悪魔退治に出かける。
  • 『道行(みちゆき)』のシーン。逢坂山を超え、滋賀の浦波を眺め、粟津の森を抜け、石山寺では伏し拝み(ここも観音様です)勢田の長橋を駆け抜けて、伊勢から鈴鹿へと。
  • ものすごい鬼が出てきて、戦いとなる。
    ここで、地謡が「ふりさけ見れば伊勢の海。安濃の松原むら立ち来つて」と。海が見える高い所で戦っているのが分かる。
  • 鬼神がごうごうと集まって押し寄せてくるところに、千手観音が光を放って飛んできて、その千の手ごとに弓を持って矢を放つ。そしてことごとく鬼神は討たれた。と。田村麻呂は千手観音の加護で勝利を収める。
  • 最後も、全く観音の御力、佛力のおかげである。と言って終わる。

鼎談

[青柳] さて田村ですが。箙(えびら)、八島とともに能の中では勝修羅(かちしゅら)と呼ばれていますが、どうでしょう、修羅というのは仏教でいうと六道にあらわされている殺し合いの世界ですが、この田村には陰惨さが無い、修羅というには明るい感じがするのですが。

[友枝] 勝修羅三番、勝修羅というのは後世の人が種別したもの、和歌の三夕の歌のように後世の人が言ったものです。修羅ものというのは戦さを描くわけですが田村の場合は倒す相手が人間ではなく鬼。人を殺めて修羅道に落ちて苦しむところは描かれていない。人間ドラマはないが、健康な勇ましさに溢れていて、祝言の側面が強い能です。

[成田] 内容と全然違う話になってしまうのですが、私達囃子方の世界の話をちょっといたしますと、囃子方は小さい頃、6才の6月6日に、この田村から稽古を始める。おめでたい曲なんです。どんな曲かというと、前半は非常に美しく、後半は実に勇ましい。対比の素晴らしい曲です。囃子方にとっては見せ場が多い、前半は優雅で、後半はぐっ~~っと盛り上げ迫力を出す。メリハリが効いていて、飽きるところがない。目が離せない曲です。

[友枝] シテ方は能の稽古を始めるのはもっと早いのですが、田村は、声変わりした最初のころに稽古する曲です。前半から一人で語る部分が長い曲なんですが、ものがたりは、例えば源氏物語が題材の曲のような強い感情の起伏は少ない。その面でシンプルにお能というものをとらえやす曲です。
私は18歳のころこれをやった時にヘロヘロになった、稽古の度に本当にくたびれたのを覚えています。これが不思議と50歳がやると出来る。それはどういうことかってことなんですが。

[成田] 謡の分量が本当に多いと思う。覚えやすいいい曲だが、長くて大変だと思います。

[青柳] 白田村の「白」につきまして。

[友枝] 能は演出にバリエーションを持った曲というのは意外とありまして、小書きというのがついたものがあるんですが、題名に小さな字が入るものがそれです。しかし白田村は「白」という字が同じ大きさで題名の上についてくる。私どもの喜多流では小書きよりかなり重くあつかっています。
私自身の体験としても「白田村」は最初に教わっていた師匠が一番大切にしていた曲で、特別な曲なんだというのは、そのころからの印象も強いです。

面も、後シテの田村麻呂は、「田村」では平太(へいだ)をつけるんですが、白田村では天神の面をつける、そういうところからも非常に神格化されていると思う。

[青柳] それでは実演を。みなさん、そのあたりの違いに注目してみてください。

実演では、田村の独調を、通常の田村と、白田村でお聞かせくださいました。
台本も囃子方の楽譜である手付けも、まったく同じとお聞きしましたが、
謡と演奏から生まれるうねりのようなものが、全く違います。
息をのんでいた会場からは、ため息とともに大きな拍手。

[成田] (白田村は)緩急が違いますね。
我々囃子方にとっても格が違う曲、大切にしている曲です。

[雄人] 白田村は神格化されているというのもあり、動いていない時――ただ立っている時でも、ズドンとした重さ――存在感が要るので、そこは演じ手にとっては一番、悩ましいところでもあります。


続いて成田達志さんによる幸流の小鼓、体験講座が行われました。
縦書きの楽譜である手つけの読み方を教わりつつ、「エアー鼓(手拍子)」で体験しました。なかなか難しいのですが、お能のリズムを表現してみる、非常に面白い体験です。


レポートは以上となります。

# 祝言の側面が強いというお話がありましたが、今回の「田村」は、物語性の強い他の能に比べ、単にストーリーを追っただけでは、その面白さはなかなかイメージできませんでした。しかし今回、青柳先生の解説をお聞きし、このお能は一場面一場面が非常に美しい構成になっていることが分かってきました。そしてその舞台の上に、友枝さんと成田さんを中心に立ち上がってくる存在感はいったいどんなイメージを見せてくれるのでしょうか。僧の前に現れる童子、鬼神を平らげる田村麻呂に会ってみたい。本番が非常に楽しみになる会でした。

2021年1月24日(日)に開催される白田村の本番、五蘊会の情報は下記より
https://tomoeda-kai.com/schedule-noh/2945/

ご参加の皆さま誠に有り難うございました。
武相荘、お能への誘いの会、次回もどうぞお楽しみに。

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