開催レポート 第7回お能への誘いの会「井筒」
掲載日 2018年7月26日
2018年7月14日(土)開催 第7回 武相荘お能への誘いの会「井筒」
能楽師 シテ方喜多流 友枝雄人氏
能楽師 小鼓方幸流 成田達志氏
解説・司会 古美術評論家 青柳恵介氏
青柳恵介氏
謡曲「井筒」のものがたりと成り立ちについて
- 本説「伊勢物語」
元々は、在原業平の物語を中心としながら、それ以外の人々のお話も含んでいる、色々なお話を集めた逸話集として成立した。
しかしこれが時代が下って中世になると、すべてが業平の物語だという解釈になってくる。
井筒の元となった「たけくらべ」のお話についても元々は業平の話とは書かれていないが、中世以降の解釈によって業平と紀有常の娘の話ということになっていった。世阿弥の作った「井筒」の能は、この中世以降の解釈に依拠している。 - 在原業平はプレイボーイ、「むかし男」「まめ男」と言われる。
紀有常の娘は、「人待つ女」「井筒の女」と言われる。健気な女性。 - 謡曲のあらすじ
後半、男装で出てくる、愛する業平の服を身にまとって出てくる井筒の女、井戸に映る姿はついに業平そのものになっている。これは白洲正子の言うところの「両性具有の美」
友枝雄人氏
- 「井筒」は、能役者にとって非常に挑戦しがいのある曲。
- その良さというものは単に技術だけでは作り出せない。言葉には表せない雰囲気、世界観がある。
- 男装については、井筒の女が幸せだった日々を追憶する…だけではない深く複雑な部分もあると思う。
- 今回の公演について
「段の序」という特殊な演出を入れる。演出が変わるので難しくなるが、なぜやるか?と問われれば「感じ方の密度」を上げることもできるから。
(成田氏とお二人で→)違うリズム、同じ尺で、謡い、舞と囃子をあわせていく。お互いの息をはかりながら同調しあったり反発したりする。
(青柳氏)以前、福原麟太郎さんがお能は「危機の芸術」だと言われていたことを思い出す。
成田達志氏
- お能の世界に入ったばかりの20代のころ片山幽雪さんに「いつか井筒を打つ役者になってくれよ」という言葉をかけてもらったのを印象深く覚えている。井筒とはそのような曲。
- 非常に完成度の高い素晴らしい曲。
- 「初秋」の曲で、一番最初の地謡から、この雰囲気を出していくことが大切なポイント。
- 太鼓の入らない「序の舞」が非常に長い。囃子方にとっても大変だが、序の舞あってのクライマックスとなっている。
- 男装の女性、私から見てどんな舞かと言うと「官能的」だと思う。
小鼓の体験
- 成田氏「鼓は1丁、2丁・・というふうに数えます。」
今日は練習用の小鼓を6丁をご用意くださいました。 - 成田氏「鼓って鳴らないんだな、ということを体験して欲しいと思います。」
- どんな楽器か〜〜紐は「麻」でできている。胴の部分が特徴的、アジアには同じルーツを持つ楽器がいくつかある。日本には奈良時代に入ってきて、今の形になっていった。
- 湿度の影響を非常に受けやすく、息をかけ、裏紙に唾をつけてしめらせることで調整する。
- 持ち方、音程の変え方、構え方、打ち方(指輪や腕時計は外してくださいね)
- みなさん興味深々、次々に体験しました。
- いい音、変な音(笑)会場じゅうに様々な音がこだましました。
最後に参加者からの質問
- お能は舞台本番に向けてどのぐらいお稽古、準備をなされのですか?
(成田氏)舞台の予定が決まってから長い期間各々稽古をしていくのですが、打ち合わせは1回だけ(一同え〜〜!)特に雄人さんの喜多流は、本番当日まで、できれば打ち合わせはできればしたくない。と言われる。
(友枝氏)お能は一挙手一投足が決められている本のある古典芸能なので。もしリハーサルというか、一度合わせてみて気に入らないところが出てしまうと、本番でそれはやらない。ということになってしまう。だったら申し合わせはしないで、緊張感を持って、それぞれのイマジネーションを本番にぶつけていった方が良い。という思いがあります。
(武相荘館長 牧山)友枝さんのそいういうところは、やはり代々武家の、そういう発想もあるんじゃないかな。どう?
(成田氏)ご本人はおっしゃらないかもしれませんが、そういう部分はお持ちだと思います。
第7回のレポートは以上です。
たくさんの見どころを教えていただいたように思いますが、特に
「段の序」という難しい演出で、その作品の高みを目指される舞台、
本番どのように感じることができるか、今から楽しみです。
「井筒」の本番となる五蘊会は2018年8月4日(土)、
東京・目黒駅近くの喜多能楽堂での開催です。
[チケット情報] https://tomoeda-kai.com/schedule-noh/1853/