お能への誘いの会・お能「松風」観劇レポート

掲載日 2015年9月15日

8/29土 武相荘の講座「お能への誘いの会」

喜多能楽堂で 9/12土に開催のお能「松風」を目前に、
能楽師の友枝雄人さんと、国文学者の青柳恵介さんの対談を開催しました。

対談は「松風」の話を中心に進みました。
まず青柳さんから、物語の主人公である蜑(あま)の女性たちの当時の仕事や生活ぶり、 姉妹の2人が幽霊となってまでも待ちつづけた、在原行平とは何者だったのか?—物語の背景が紹介されました。

2015年8月29日「お能への誘いの会」武相荘にて

これに対し、友枝さんからは、演者とっての「松風」の魅力が語られました。
一生のうちに幾度もは舞えない程の大曲だが、曲自体は一部の隙もなく出来上がっており、言葉が美しい。見ている皆さんは長いと感じられるかもしれないが、演じている側からすると短く感じる程なのです。そうおっしゃっていました。

さて、ご存知の方々には当たり前のことでしょうが、他の芸能と比してお能の特異な点として「本番が一度しか無い」ということがあります。数ヶ月に渡る稽古と修練の成果が、我々の目の前に披露されるのは、実に1度きりなのです。

お能は一期一会の芸です— 本番での役者同士の緊張感のぶつかり合い、それをを観ていただくのがひとつ、楽しみと言えます。友枝さんはそうもおっしゃっていました。

古来「熊野松風は米の飯」(ゆやまつかぜはこめのめし)といわれ、松風は昔から日本人に好まれ親しまれて来た謡曲です。と青柳さん。友枝さんのお爺さま喜久夫さんも大好きな曲だったそうです。

今回、友枝さんがどのように演じられるのかに、ますます興味を引かれていきました。

2015年8月29日「お能への誘いの会」武相荘にて

9/12土、喜多能楽堂にて、條風会「松風」

本番

前段の対談では、初めて知る話も多く、
演じる側の心持ちも含め、いろいろなお話を伺ってきましたが、

本番の舞台は、それを超えて
友枝さんの、しかし友枝さんではない「松風」がそこに存在している様子を
観させていただいた気がします。

お能の芸だからこそ、震わせられる琴線というものを
感じることも出来た気がします。

今回の「松風・村雨」がどのような存在であったかは、
この場に居合わせた者同士で、ぜひ誰彼憚ることなく
話してみたいところであります。

今回は演じ手の動きが見やすい指定席で観覧できたことも
(特に初心者にとって)とても良かったと思います。

ご参加頂きました皆様、誠にありがとうございました。
(ご好評につき「お能への誘いの会」は第2回を検討中です!)