草づくし

草のいろいろ

草とは何かと問われても、すぐには答えることはできない。草本科の植物といってみたところで、何の意味もなさないし、どれほど種類があるものか、見当もつきかねる。

草葺とか草屋根という時は、すすきにきまっていることは判るが、草色、草むら、草刈などは、もっと広義な雑草一般を指すように思われる。そのすすきでさえ、薄、芒とも書き、萱(かや)や尾花(おばな)と呼ぶこともあるのだから迷ってしまう。
なまじ植物図鑑などの助けを借りると、すすきは草の名ではなく、単なる形容詞にすぎないなどと書いてある。「すくすくと立ちたる草木のこと」だそうである。
どうもはじめから面倒なことになったが、ほかの日本語でもそうであるように、どこか漠然としてつかみどころがない。ラテン語の学名なみに、清潔にわり切ることはできないのだ。そのわり切れないところに、いうにいわれぬ陰翳があり、草と聞いたとたんに私は、たとえば次のような歌を思い起こすのである。

かすが野の雪まをわけておひいでくる
草のはつかにみえしきみはも

壬生忠岑(みのぶただみね) 古今集 恋一

(——序文より)

草づくし

カバー表:ミズヒキ、クマガイソウ、ニラ、ヒナゲシ、ワレモコウ、サギソウ、ヤマオダマキ、レンゲ、スズムシソウ、レンゲショウマ
カバー裏:尾形光琳ほか 扇面貼交屏風より「朝顔図」「菊図」静嘉堂文庫蔵
見返し前:霧ヶ峰の八島湿原にて 黄色はハンゴンソウ 紅はヤナギラン
見返し後扉:戸隠高原にて ニリンソウ 岩崎灌園『本草図譜』より すみれ 国立国会図書館蔵

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